
本記事のオススメ対象者は以下のような人です。
1.マラソンが速くなりたい人
2.マラソンのコーチを目指している人
3.速くなるために効果的なトレーニングが知りたい人
マラソントレーニングの1つである「インターバル走」。
インターバル走とは設定した距離を「疾走:速いペース」と「レスト:ジョグ」を繰り返すトレーニングです。
インターバル走は効果的に行うことが出来れば、スピード強化・スピード持久力を強化しマラソンの記録更新に直結します。マラソンの記録にこだわる人であれば、欠かせないトレーニングの1つです。
本記事ではそんなインターバル走について初心者ランナーさんでも分かりやすいように解説していきます。

「インターバル走を効果的に行いたい」・「トレーニングを自分で考えて調整出来るようになりたい」というランナーは参考にしてみて下さい。
インターバル走とは?

インターバル走とは、事前に設定した距離を速く走り、その後軽いジョグで回復するというサイクルを繰り返すトレーニングです。
速く走る疾走区間は全力ではなく、おおよそ”80%程度の力”で走るのが基本で、フォームとペースを崩さずに最後まで走ることが重要です。回復区間は完全休息ではなく、軽いジョギング(不完全休息)で心拍数が落ち切らないようにします。
インターバル走は糖質エネルギーを消費し乳酸が急激に生成されるペースで走ります。乳酸と同時に生じた水素イオンなどが筋肉の活動を阻害し、次第に足が重たくなり失速してしまいます。そのため、インターバル走は走り続けることが出来ないペースで走るため、インターバルとしてレストが必要です。
しかし、完全に心拍数が落ち着くまで休んでしまうと心肺に最大限の負荷をかけることが出来ないため、レスト中はジョグを行います。
インターバル走の効果

最大酸素摂取量(VO₂max)が向上しやすい
インターバル走は呼吸・心拍数が高い状態を繰り返すため、酸素を多く筋肉へ運んで取り込み、エネルギーに変換する能力に強い刺激が入ります。
その結果、VO2maxを改善し、条件によっては中強度の持続走より大きな改善がみられると報告されています。
VO2maxはランナーにおける戦闘力みたいなものです。VO2maxが高いランナーはマラソンで好記録を残しやすいです。
なぜVO₂maxが向上しやすいのか
VO2maxは、簡略化すると次の式で表されます。
VO₂=心拍出量(心臓から送り出す血液量) × 筋肉が血液から取り出す酸素量
インターバル走では「酸素を送る側:心臓・循環系」と「酸素を使う側:筋肉」の両方が変化します。
インターバル走で繰り返し高い心拍数まで上げることで、循環器系では以下のような変化が生じます。
・血漿量の増加
・心臓へ戻る血液量の増加
・1回拍出量の増加
・最大心拍出量の向上
・筋肉への血流配分の改善

つまり、1回の心臓の拍動でより多くの血液を送りやすくなり、運動中の筋肉へ酸素を供給できる量が増えます。
特に2~5分程度の比較的長いインターバルは、心拍出量を高い状態で維持しやすいため、VO₂maxへの刺激が大きくなります。
インターバル走を行うことで筋肉では、以下のような変化が生じます。
・ミトコンドリア量・機能の向上
・酸化系酵素の活性向上
・毛細血管から筋線維への酸素拡散能力の改善
・筋肉が血液から酸素を取り出す能力の向上

同じ血液量が届いても、筋肉側が酸素を効率よく使えるようになるため、全身として利用できる酸素量が増えます。
速いペースを維持する能力が高まる
速い疾走をを繰り返すことで、レースペース以上の速度に身体を慣らせます。
特に改善が期待できるのは、以下の点です。
・脚を素早く動かす能力
・速いペースでのフォーム維持
・呼吸が苦しい状態で走り続ける能力
・ラストスパートやペース変化への対応力

単純な最高速度だけでなく、「速いスピードを何度も出せる能力」や「速いペースで粘る能力」を高める練習と考えると分かりやすいです。
速いペースでは遅筋線維だけでなく、より多くの速筋線維、特にタイプⅡa線維が動員されます。
インターバル走を続けると、以下のような変化が起こる場合があります。
・速筋線維(速く強い力を発揮する筋肉)のミトコンドリア機能向上
・タイプⅡ線維の酸化能力向上
・タイプⅡxから、より疲労に強いタイプⅡaへの移行
・高い筋出力を繰り返す能力の向上

つまり、速筋線維が遅筋線維へ完全に変わるのではなく、速さを保ちながら、以前より疲れにくい性質を持つようになります。
※
遅筋線維:比較的ゆっくり動き、持久力に優れた線維
Ⅱa線維:遅筋線維と速筋線維の中間的な特徴
速筋線維:速く・強く動くが、持久力は乏しい繊維
乳酸が増える強度への耐性が高まる
強度が高くなると、糖質をエネルギーとして利用する量が増え、乳酸の産生も増加します。
インターバル走を続けることで、以下のようなことが改善する可能性があります。
・乳酸を別の筋肉や心臓でエネルギーとして利用する能力
・水素イオンなどによる筋収縮低下への耐性
・高強度運動からの回復能力

ただし、乳酸性作業閾値の向上を最優先する場合は、全力に近い短いインターバルよりも、閾値付近で行うテンポ走やクルーズインターバルの方が目的に合うこともあります。
ちなみに乳酸そのものが疲労物質として蓄積して動けなくなるわけではありません。乳酸は筋肉や心臓で再利用できるエネルギー源です。
高強度運動では乳酸と同時に、水素イオン、無機リン酸、ADPなどが増加し、筋収縮や力発揮が低下しやすくなります。
インターバル走は以下のような変化が起こる可能性があります。
・乳酸輸送体MCT1・MCT4の適応
・乳酸を筋肉内で酸化する能力の向上
・心臓や遅筋線維へ乳酸を運ぶ能力の向上
・筋肉内の緩衝能力の改善
・高強度時のpH低下への耐性向上

その結果、同じ速いペースでも代謝産物の変化が小さくなったり、発生した乳酸を速く利用できるようになったりします。
ランニングエコノミーが改善する場合がある
ランニングエコノミーとは、同じ速度をどれだけ少ない酸素消費で走れるかを示す指標です。車でいう燃費みたいなものです。燃費が良いと少ないエネルギーで走ることができます。
速いスピードで走ることで、以下のような変化が生じランニングエコノミーが高まる場合があります。
・筋腱の弾性利用
・神経と筋肉の協調性
・接地時間や脚の切り替え
・速いペースでのフォーム

ただし、VO₂maxほど一貫して改善するとは限らず、トレーニング歴、設定速度、筋力、フォームなどに左右されます。
インターバル走で速い動きを繰り返すと、神経と筋肉の連携にも刺激が入ります。
【具体的変化】
・必要な運動単位を素早く動員する能力
・筋肉を収縮させるタイミングの改善
・左右・上下方向への余分な動きの減少
・速いペースでの接地時間短縮
・脚の切り替え動作の習熟
・筋腱の弾性エネルギー利用の改善

これらの変化は”同じ速度を以前より少ないエネルギー消費で走れる可能性”をもたらします。
※
ただし、ランニングエコノミーは筋力、フォーム、腱の硬さ、走歴などの影響も大きく、インターバル走だけで必ず改善するとは限りません。短いインターバルや坂道走、筋力トレーニングとの組み合わせが有効な場合もあります。
インターバル走の設定距離とペース

インターバル走の設定ペースは、「できるだけ速く」ではなく、目的・疾走時間・レスト時間に合わせて決めるのが基本です。
特に大切なのは、1本目だけ速く走ることではなく、最後まで大きく失速せず、設定した本数をこなすことです。
| 練習の目的 | 1本の距離 | 1本の時間 | Tペースとの関係 | 本数の目安 | レストの目安 |
|---|---|---|---|---|---|
| クルーズインターバル | 1,000〜3,000m | 5〜15分 | Tペース前後 | 3〜6本 | 60秒〜2分ジョグ |
| ロングインターバル | 1,000〜2,000m | 4〜8分 | Tペースより5〜15秒/km速い | 3〜5本 | 90秒〜3分ジョグ |
| VO₂maxインターバル | 600〜1,200m | 2〜5分 | Tペースより15〜30秒/km速い | 3〜6本 | 疾走時間の50〜100% |
| 短いインターバル | 200〜600m | 45秒〜2分 | Tペースより25〜45秒/km速い | 6〜12本 | 60秒〜200mジョグ |
閾値・乳酸処理能力を高めたい
1,000〜3,000m
Tペース前後
短めのレストで反復
【例】
・1,000m×5〜6本
・2,000m×3本
・レスト60秒〜2分

速さよりも、閾値付近で走る合計時間を増やすことが中心です。
スピード持久力を高めたい
1,000〜2,000m
Tペースより5〜15秒/km速い
【例】
・1,000m×4〜5本
・1,600m×3〜4本
・レスト90秒〜3分

VO₂maxインターバルより少し遅めですが、1本を長く走ります。
VO₂maxを高めたい
600〜1,200m
Tペースより15〜30秒/km速い
1本2〜5分程度
【例】
・800m×5本
・1,000m×4〜5本
・1,200m×3〜4本

呼吸はかなり苦しくなりますが、全力ではなく、最後までペースをそろえられる速度にします。
スピードや速い動きを高めたい
200〜600m
Tペースより25〜45秒/km速い
【例】
・400m×8〜10本
・200m×10〜12本
・レストは200mジョグまたは60〜90秒

短い距離では速く走れますが、全力疾走にはしません。
【インターバル走を適切な設定にすると…】
・1本目に余裕がある
・中盤から呼吸がかなり苦しくなる
・最後まで大きく失速しない
・ランニングフォームを保てる
・終了後に「あと1本ならできそう」と感じる
【ペースが速すぎるか、レストが短すぎる場合】
・1本目から全力
・2〜3本目で大幅に失速
・レストを予定以上に延ばさないと続かない
・上半身やフォームが大きく崩れる
気温、湿度、風、坂道、疲労状態によって、同じペースでも身体への負荷は変わります。
特に暑い日は、平常時よりペースを落とし、主観的なきつさ・呼吸のきつさを基準にします。短いインターバルでは心拍数の反応が遅れるため、心拍数だけで設定するのは難しい場合があります。
まずは次のような設定が取り入れやすいです。
400m×5〜6本
現在の5kmレースペース前後
レストは200mのゆっくりジョグ
余裕を持って本数をそろえられたら、次回以降に以下のいずれか一つを調整します。
・本数を1本増やす
・レストを少し短くする
・疾走距離を長くする

ペース・本数・レストを同時に厳しくすると、負荷が急激に高くなるので避けた方が安全です。
まとめ
本記事ではインターバル走について解説してきました。
設定した距離を「疾走:速いペース」と「レスト:ジョグ」を繰り返すトレーニングです。
速く走る疾走区間は全力ではなく、おおよそ”80%程度の力”で走るのが基本で、フォームとペースを崩さずに最後まで走ることが重要です。回復区間は完全休息ではなく、軽いジョギング(不完全休息)で心拍数が落ち切らないようにします。
インターバル走を行うことで「最大酸素摂取量(VO₂max)が向上しやすい」・「速いペースを維持する能力が高まる」・「乳酸が増える強度への耐性が高まる」・「ランニングエコノミーが改善する場合がある」などの効果が期待できます。
その背景には心肺機能への強い刺激・筋肉への刺激などにより、これらの能力が向上します。インターバル走はマラソンの記録更新に大きく貢献するトレーニングです。
インターバル走は目的によって設定距離が異なってきます。
スピードを強化したいのであれば、”距離は短め”で”やや速め”で走る。
速いペースを維持するスピード持久力を強化したいのであれば、”距離は長め”で”短めより少しペースは落とす”状態で走ります。
インターバル走を伸ばしていきたいのであれば、”走るペースを速くする”・”本数を増やす”・”レストを短く”するの内、1つだけ変化させます。
全て変えると負荷が急激に増えるためNGです。

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